Hello world!

WordPress へようこそ。こちらは最初の投稿です。編集または削除し、コンテンツ作成を始めてください。

って書いてある。

震える手でドメインを取得して、今日からいよいよ私も小説家だぞと、ドキドキしながら管理画面を開いたのに。真っ白な原稿用紙が待っていると思ったら、すでに先客の置き手紙があった。タイトルは、どこか楽しげな『Hello world!』。

「WordPress へようこそ」

わざわざご挨拶してくれたんだ。システムって冷たいイメージがあったけれど、ちゃんと玄関先で出迎えてくれるなんて、思っていたよりずっと温かいじゃないか。

こちらこそよろしくお願いします、ワードプレスさん。

「こちらは最初の投稿です」

あはは、抜け目ないなあ。記念すべき「一番乗り」をシステムさんに先を越されちゃった。でも、誰もいないガランとした部屋に一人で放り出されるより、こうして誰かが先に灯りをつけて待っていてくれたみたいで、なんだかちょっとほっとする。

「編集または削除し、コンテンツ作成を始めてください」

解説サイトには「まずはこのテスト記事をゴミ箱に入れましょう」なんて書いてあったけれど……うーん、なんだか勿体ないというか、申し訳ない気がする。せっかく「ようこそ!」って声をかけてくれたのに、出会って数秒で無言でゴミ箱にポイしちゃうなんて、人としてあまりに冷酷すぎやしないだろうか。

そういえば、この『Hello world!』って、プログラミングの世界ですごく有名な合言葉なんだっけ。

ということで調べてみた。

昔、C言語を作ったブライアン・カーニハンさんという偉い人が、コンピューターに一番最初に喋らせた言葉。「世界よ、こんにちは」。

なるほどなるほど。

生まれたばかりの機械が、暗闇のなかでパチパチと目を瞬かせて、恐る恐る人類に向かって小さな手を振った……そう思うと、なんだかすごく健気で、愛おしい歴史じゃないか。

世界よ、こんにちは!

いいね。これからここで物語を紡いでいこうとする私にとっても、これ以上ないくらい素敵な挨拶だ。

「編集または削除し」

うん、決めた。私は絶対にあなたを消さないよ。

せっかくのご縁だし、この親切な挨拶を一番上に残したまま、ここから物語を書き足していこう。あなたと私の二人三脚で、最初の作品を作るんだ。

ちょっと不器用かもしれないけれど、それくらいの方が温かみがあって良いじゃないか。

「待っててね、今、素敵な続きを書いてあげるからね!」

私はパソコンの画面に向かってぺこりと小さくお辞儀をして、嬉しくなって少し熱くなったキーボードに、そっと指を置いた。

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